生き方カレッジ4回目のゲストは、NHKの大河ドラマ「篤姫」など数々の人気ドラマを生み出した脚本家の田渕久美子さんです。対談の後半では来年の大河ドラマのお話や女性の生き方について語って下さいました。(聞き手・ノンフィクションライター歌代幸子さん)
本当の気持ちに向き合って

——来年の大河ドラマ「江(ごう)」の脚本を担当なさいますよね。どんな女性像を書く予定ですか。まだオフレコでしょうか。
私が女性たちに一番望んでいるのは、その人がその人らしく生きてもらいたいということです。100人いれば100通りの生き方や感じ方があるわけで、自分自身の持つ「何か」を信じてほしい。そのために、自分をかわいがっていただきたいし、認めてほしいのです。大河ドラマの原作本「江(ごう)」の中で、織田信長が姪の江に言う言葉として「そなたは宝を持っておる。それを大切にして生きよ」と書いたのですが、ドラマを通じて、「宝」を自分の中に見つける大切さを知っていただければと思います。自分を信じると書いて、
「自信」と解釈しています。自分を信じて生きる。それこそが幸せな人生だとも思います。
——今の女性たちを田渕さんはどのようにみてらっしゃいますか。
すごく気の毒だと思います。これだけ多くの情報に囲まれて生きてきて、ものすごく鋭い感覚を持っていながら、逆に鋭すぎて周りの情報を必要以上にたくさん取り込んだり、隣の人の気持ちも感じとったりして、かえって「自分は何なのか」が見えなくなってしまう。周りの人の「こうしてほしい」という思いや期待にこたえてしまおうとするんですね。私もそうでした。結婚前は母の期待に応え、結婚したらしゅうとめや夫の期待に応えてきて、そのうち「私はいったいどこにいるのだろう。何をしているのだろう」という状態になっていました。
——どうしたらいいのでしょうか。
自己対話を徹底するしかないと思います。例えば自分の好きなものと嫌いなものとその理由を書いてみる。それをみつめていると、好きだと思っていたものも、実は母親が好きで、その気持ちを感じとって自分も好きだと思っているだけかもしれない。そうして自分の気持ちを追求していくとやっと、本当の心が見えてきます。それを信じて、あるがままに生きる覚悟と勇気を持つこと、これに尽きると思います。
自分を愛すると他人も愛せる

——自分を信じられず、不安な気持ちを抱えている女性がたくさんいると思います。自分を信じ、あるがままに生きるための「ワザ」を教えていただけたら・・・。
とにかく自分を褒める。どんなことでもいいので、認めて褒めることです。自分の好きになれない部分も含めて丸ごと認めて「全肯定」して愛して下さい。嫌いな部分や変えたいけど変えられない部分も「そうせざるを得なかった、そうならざるを得なかった」としていったんは認めてほしいと思います。すると不思議なもので、ならばどうすればなりたい自分になれるのか、またその方法が、くもの糸のように、ツーッと下りて来るんです。夫に死なれてみてつくづく思ったのですが、人間は結局、一人で生まれて一人で死ぬ生き物です。生まれてから死ぬまで一緒にいてくれるのは自分だけです。子どもだって夫だって去っていく。最後まで去らないのは自分だけ。だから、自分を愛して自分との関係を最高のものにしたら、おのずと周りにもよいものが引き寄せられてきますね。
——「自分を愛する」ですか。
私も意外でした。利己的なように思えて。でも、まずは人を愛そうと思ってもなかなか難しい。我が子にだってそう。自分を愛するようになって初めて分かったのですが、自分を愛すれば愛するほど、内側から愛があふれて他人にもそれが向かうようになります。そして愛すれば愛するほど自分自身がきれいになりますよ。女性は特に分かりやすいです。
——田渕さんもどんどんおきれいになっている。
とんでもないです(笑)。でもピチピチしていた若かったころの自分より今の自分の方が好きですね。魅力と美しさやきれいさって別だと思います。私は「きれい」より魅力ある人間になりたいと思っています。魅力って、じたばたしたり、苦しんだり悩んだりした結果、増していくもの。だから、悩むことを恐れないでいただきたいですね。

田渕久美子(たぶちくみこ)さん
脚本家
1959年島根県生まれ。85年脚本家デビュー。03年NHK朝の連続ドラマ「さくら」で第11回橋田壽賀子賞を受賞。08年に脚本を執筆したNHK大河ドラマ「篤姫」は高視聴率を記録。11年NHK大河ドラマ「江(ごう)〜姫たちの戦国〜」では原作と脚本あわせての執筆が決定。著書「女の道は一本道」(小学館)も話題に。

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