
黒々と煙を上げる東電福島第一原発。農林水産省4階の自室のテレビで見て、直感した。「このままじゃ食べ物パニックが起きる」
事故発生時、国内には食品の放射能基準がなかった。「ここまでなら安全」と示さないと、検査でわずかでも検出された場合、消費者は問題ない食べ物でも全部拒んでしまう。その危機感であちこちに働きかけ、基準の設定にこぎつけた。「日本の食を担うひとり」と部下は言う。
幹部のひとりだが、公務員試験は受けていない。農学博士。国際的な食品の安全基準を定めるコーデックス委員会(ローマ)に7年半勤め、2000年に同省の研究所に。牛海綿状脳症(BSE)問題後の05年、専門知識や国際人脈を買われて課長に抜擢(ばってき)された。
短髪、強い視線、豪快な笑い声。時には大臣室で居並ぶ幹部を前に大声も上げる。「役所内に守ってくれる人がいない代わりに、市民のために自由にやれる」
食べ続けて本当に安全なのか。政府の規制や説明が国民に安心感を与えているとは言い難い。「専門家同士だけで分かりあっても仕方ない。相手を思って話ができるかどうか」。自省を込めて言う。
野菜汚染、土壌改良、お茶の扱いに淡水魚。食品問題は次々に姿を変える。「セシウムはなかなか消えてくれない。常に先の先を考えていないと」
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やまだゆきこ(59歳)
(朝日新聞2011年6月21日付朝刊「ひと」欄から)

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