2012.1.4

投げられた試練、受け続け36歳役員に

成島由美さん(株式会社ベネッセコーポレーション プリンシパル) 

女性エグゼクティブの視点

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今、日本の子どもたちをとりまく環境は大きく変化し、諸外国と比べ学力低下しているとの指摘もあり、改めて教育の重要性が叫ばれている。教育事業のリーダーカンパニー、ベネッセコーポレーションも、大きな危機にさらされてきた。それらを数々のユニークな戦略で脱し、わずか36歳で執行役員に就いた成島由美さん。新人時代から、生意気と言われるくらいに上だけを向いて突っ走ってきた成島さんが、執行役員になって見えてきた仕事の目標とは……。(聞き手:「J-Win」ライター小林亮子)

ユニークな戦略でV字回復

──エントランスで子供たちの姿を見ました。御社らしい風景ですね?

教材作成の事前チェックのために集まってくれた子どもたちだと思います。実際に商品にする前、校正紙の段階で、子どもたちに問題を解いてもらい、どこで鉛筆が止まるかを編集者がチェックするんです。子どもに理解できなかったところについては、こちらの問題の示し方などが適切かを再検討し、修正を加え、色校正紙の段階でもう一度子どもたちに解いてもらいます。修正後はスラスラと解けたりするのです。弊社の商品は書店で販売していないので、ともすると、顧客とのつながりが見えなくなってしまいますので、このように「顧客を見ながら作る」ことをとても大切にしています。

私自身、入社後に配属された中学生向け通信教材「進研ゼミ」の編集部で、子どもたちと接するうちに、少しずつ仕事が好きになっていきました。メインの教材である「チャレンジ」には中学生全体で約80万人、1学年でも約25万人の読者がいて、毎月手元に届くのを待ってくれている。最初は、ファッション誌のような華やかな仕事への憧れがありましたが、これほどの部数の月刊誌はほぼありませんでしたから、「『チャレンジ』も、いいな」と思うようになったのです。

──「顧客、子供たちと接すること」は、執行役員に就任された今も大切にされていますか?

もちろんです。今日も雨の中、事業部員が東京・神奈川の小学校校門前に立って新1年生を応援する活動をしています。4月入学予定のお子さんと親御さんたちが新入学検診で集まる日なので、「進研ゼミは私たちが作っています。新1年生を応援するので、ぜひどうぞ」と、案内書を手渡すのです。私も、この後に向かいます。小学生事業部全員の活動ですが、全社員のイベントにするべきだと、社長に提案したのです。

イベントには、子どもたちやお母様たちに直接会うという以外に、社員全員に危機意識を持ってもらうという意味もあります。実は、今年から我々の事業環境がまったく変わってしまうのです。通信教育教材は、新1年生の契約数によってその先の利益が決まってくるのですが、今年の新1年生以降の子供については、市役所で住民台帳を写すことができないので、ダイレクトメールが送れなくなるのです。現在、1年生の営業部員は、20人ほどいるのですが、20人だけではもはや戦えないと思っています。社員全体でこの緊張感を共有しなくてはなりません。この寒い中に立ち続けたら、きっと何かもっといい作戦を考えることになると思います。

──これまでもユニークな戦略を実践されてきたそうですね。中学生事業の責任者となり、落ち込んでいた業績をV字回復に導かれたとか。

中学生向け事業部の本部長になった時は、「合格させて、中学生を泣かせよう」というコンセプトを打ち出し、事業部員全員を高校の合格発表に行かせました。

会場では、合格した子どもやお母さんが「進研ゼミ、やっていました。ありがとうございます」と声をかけてくれるので、一緒に写真を撮ったり、どの教材がよかったかをインタビューしたりして、ダイレクトメールに載せるのですが、成果はこれだけではありません。うれし泣きをしている子どもや胴上げを見て、社員もわんわんもらい泣きをします。そして会社に戻ると、憑き物が落ちたような顔をして仕事をするんです。東京都立高校の合格発表日に全社員参加の朝礼が組まれたことがあり、その時は怒りがこみあげ、「参加しなくていい。責任は私がとる」と言いました。自分たちの仕事がどこにつながっているかを忘れると、社員の顔はドヨンとしてきます。そうならないように刺激を与えるのが、リーダーの役目だと思っています。

それから、2000年くらいに個人情報保護の機運が高まって、それまで最も強力な集客ツールだったダイレクトメールが使えなくなってきた時に、学生服メーカーと共同で販売促進活動をしました。「新入生のリストを持っているのは誰か?」と考えて、新入生が必ず顧客となる学生服メーカーだと気付いたんです。話をもちかけたらうまく行き、V字回復にもつながりました。今も部下には「小学生が来る場所を考えて、そこをジャックしろ」と言っています。

 


Profile

プロフィール

成島由美(なるしま・ゆみ)さん
プリンシパル 教育事業本部 幼・小事業ドメイン 小学生事業部部長 進研ゼミ小学講座責任者 株式会社ベネッセコーポレーション

1970年生まれ。92年3月、東京女子大学卒業。同年4月、福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社。中学生向け通信教育事業部配属。94年、小グループリーダー(中学英語教材)。98年、小学生事業部へ異動。同年、最年少編集長に抜擢。2000年、営業リーダー(課長職)として営業部門へ。01年、中学生事業部長。06年、社内最年少で執行役員に就任。07年、副本部長。08年、対面教育本部長。2010年より現職。「J-Winエグゼクティブ・ネットワーク」メンバー。

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